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2023年11月24日(金)
日常に着物がある風景づくりをお届けするKMN project(キモノプロジェクト)。
12月2日には、同プロジェクト主催の「うみまちキモノ盆祭『うみフェス』」が開催されます。
主催者の鈴木早織さんに活動の背景と目標について話を聞きました。
鈴木早織(Suzuki Saori)。世田谷区出身で、幼少期をインドネシアで過ごす。
大学では英語コミュニケーション学科で英語を学び、ボストンへの留学も経験。
帰国後、料理、旅行ガイド、民泊運営を経て、現在はKMN projectに専念。
2人姉妹の姉としてスクスク育つ
着物をコミュニケーションツールに「もっと自由でいいんじゃない?」を伝える活動です。
活動開始から3年目になりますが「KMN projectとは?」も日に日に進化していて、今一番腑に落ちてるのがこの表現です^^
大きく分けると2つあって、一つは古着物循環です。
使わなくなった着物を全国どこでも500円で販売しています。
『ワンコイン着物市』として自分がイベントを主催したり、ローカルマルシェなどへの出店もしています。
そしてもう一つは着物をリメイクして作ったオリジナルの商品を販売しています。
「キモノラギ」(着物 × 野良着)
着物って処分に困っている人が沢山いるけれど、こんなに素敵で。
だからこそ、この活動を通して「もっと気軽に、もっと自由に、着物を着て行こうよ!」と発信しています。
最近は音楽フェスへの出店に力を入れていて、「盆踊りといえば浴衣」「花火大会といえば浴衣」というように、ドレスコード的な意味でも音楽フェスで着物ありじゃない?という提案をしています。
ーー素敵な活動ですね!キモノラギ欲しくなってきました^^
どのようにKMN projectが始まったのかお聞きしたいです。
大学を卒業してからはフリーター生活をしながら、料理店でアルバイトしていました。
会社で働くというのは向かないと最初から分かっていたので(笑)
ーーそう思ったのはなぜですか?
社会不適合なんです(笑)
就活もしてみたけどなんか肌に合わなくて、ルールを守るとかそういうのが苦手だなと感じていました。
でもその頃は社会に収まらなきゃ行けない風潮が今よりも強くて、社会の中に入っていけない自分に対する劣等感がありました。
なので、今はピュアに「自由でいいじゃん!」って言えるけど、その時の「自由でいいじゃん!」は社会への刃向かいみたいなところはありましたね(笑)
ーー料理を選んだ理由は何ですか?
元々カフェやゲストハウスなど空間や居場所づくりに興味があって、そこから「料理というスタイルを通して居場所づくりをしたい」と思っていたのが大きな理由です。
町田のレストランバーで料理修行
ーーしばらくは料理の仕事が続くんですか?
そうですね。
しばらくは町田のレストランバーで働いて、そのあとは結婚を機に湘南に引っ越してきて、片瀬の小料理屋で働いていました。
ただ、料理の仕事は27歳ごろに辞めてしまいました。
ーー辞めた理由は何だったんでしょう?
心身の疲労が大きかったです。
休みが週に1回しかなく、朝7時にはお店にいて帰ってきたら深夜2時といったような労働環境。
加えてそのお店では、素の自分を出すことが出来なかったんです。
接客時などに、持ち前の明るさなど自分のオリジナリティを出そうとすると、店主から怒られて制限されてしまって。
段々と自分らしさを隠すように矯正されていきました。
料理を学びに行っていたので、素の自分を出せないモヤモヤを抱えながらもなんとか続けていましたが、身体も疲労していたし何より心が病んでしまい辞めました。
辞めた後も1年くらい鬱状態で、生き甲斐もありませんでした。
町田からせっかく好きな湘南に出てきたのに、ずっと仕事しかしてなかったので友達もいなく、すごく寂しい時期でした。
ーーその後はどうしたんですか?
「自分の経験値として何があるだろう?」「好きなことは?」と考えながら、また職を探し始めました。
そこで見つけたのが、資格を持っていなくてもペアで旅行客をガイドできる「お友達ガイド」でした。
「観光地だけでなく、自分の考えたプランで旅行客に地元を知ってもらう」
「他の人とペアになってガイドする」
というサービスで、これだ!と飛び込ました。
大学時代に学んだ英語も活かすことができ、湘南に沢山友達も出来てすごく楽しかったです。
段々と元気を取り戻していきました。
お友達ガイドで旅行客を案内
ーーそこから民泊へと移っていくわけですね。
そうなんです。
その時には鵠沼にマイホームがあったので、ガイドの時に「家に泊まりに来ちゃいなよ」という感じで少しずつ民泊が始まり、段々と民泊がメインになっていきました。
民泊時、朝ごはんを用意する早織さん
2人までのお部屋だったので大人数でワイワイする感じではなく、ホームステイのような暮らしに寄り添った旅の迎え方をしていましたね。
ーーそこからどのようにKMN projectが始まったんですか?
コロナの影響もあり、民泊のお客さんも減ってきちゃったんです。
そこで自分が次に熱を注げるものを色々考えた時に、たどり着いたのが着物だったんです。
きっかけは民泊での一工夫でした。
お客さんはほぼ外国人だったので、「着物を着れたら喜ぶんじゃない?」と母親がおばあちゃんの着れなくなった着物を大量に持ってきてくれたんです。
そこから着付けを自分が習いに行くというのは違うなと思って、「まずは自分が着てみよう!」とほぼ毎日着物生活が始まったんです。
ほぼ毎日着物生活
毎日のように着ていると着物のポテンシャルにどんどん気づいて、次に作ってみたい欲が湧いてくるんです。
服の本を買い漁って、着なくなった着物をリメイクする日々が始まりました。
初作品は自分の七五三のときの着物から作ったショルダーバック
そんな活動を続けていると、周りの人から使わなくなった着物が沢山集まってきたんです。
いよいよ自分一人でどうにかできる量じゃなくなり、2020年12月に初イベント、「ワンコイン着物市」を鵠沼の「松の杜くげぬま」で始めます。
初開催のワンコイン着物市
振り返ると着物のポテンシャルは、ボストン留学で受けたカルチャーショックに似ているんですよ。
それは「知らない人が普通に話しかけてくる」ことだったんです(笑)
例えば、駅のホームで線路2つ挟んで向こう側にいる人が「HEY!YOU!」って話しかけてきて、「その服どこで買ったの?」と質問してきたり^^
ボストン留学時、語学学校の仲間達
その経験に似たようなことが着物を着てると日本でも起こったんです。
着物を着ていると知らない人が「着物良いですね」と境目がなくなったかのように話しかけてくれて。
境界線がなくなるコミュニケーションツールってすごいな。
と思って着物の魅力にハマっていきましたね。
ーーこれまでの活動で印象に残っていることはありますか?
一杯ありますね!
まずは、飽き性だった自分に「飽きさせないものだな」と思わせてくれたことです。
私本当に飽き性で、すぐ物事に飽きるんです。
コロナで民泊のお客さんが減ってきた時も、「民泊飽きてたね」と思っていました(笑)
でも、着物は飽きない!
ーーなぜ飽きないんでしょう?
出店をやっている先輩から受けた影響もあるんですけど、「着物が絡んでいれば、何やったっていいじゃん?」と思えたのが大きいです。
ただただ「使われていない着物を売る」と自分が捉えていたら飽きていたかもしれません。
その枠を超えて色々なことに挑戦させてくれる。
着物ありがとう。って思ってます。
ーー他に感じているやりがいはありますか?
他には、フェスへの出店とか、色んな場所で出会う人と次々にご縁が繋がっていくのが面白いです。
今回の「うみフェス」も、愛知で出店した時にそこで仲良くなった三重の友達が、山形の人に「うみフェス」の話をしてくれて。
私もまだ会ったことないその山形の人が「何それ面白そう!」って出店してくれることが決まったりとか。
出店して一目惚れしたバンドにオファーかけたら「うみフェス」に出演してくれることが決まったりとか。
高みを目指している同士という感じで、常にそこに愛、感謝、リスペクトが生まれる。
そしてご縁が繋がっていく。
この活動を通して自分は人が本当に好きだなと感じます。
フェス出店で広がる繋がり
まずは、12/2(土)に遊行寺で主催するうみまちキモノ盆祭「うみフェス」を成功させることです。
2020年から約2年間、民泊の片手間でやってきたワンコイン着物市。
離婚など色々なきっかけもあり、今年から本腰を入れて取り組むように。フェスへの出店も増加。
そして3年目突入にあたって、とにかく突き抜けてみたいという想いが湧いてきて「うみフェス」の主催に至りました。
入場料も無料なので、ぜひ遊びにきて欲しいです。
この日もワンコインで着物の販売とレンタルをしています^^
(詳細は「うみフェス」HPへ)
ーーさらにその先の展望はありますか?
来年、フジロックへの出店を目指しています。
昨年の時点で「2年後にフジロック出店!」って言ってるんですよ。
そこから今もどんどんご縁が繋がっているので、きっと実現できます!
そしてそれに合わせて、フェス専用の「フェスキモノ」を作るつもりです。
素材も工夫して、雨が降ろうが、汚れようがお構いなし。
着物という絹で、繊細で、というところとは真逆を行く着物の販売を考えています。
着物を「普段着るようなお洋服とは違うもの」とは思わずに気軽に着て欲しいです。
これまで眠っていたところから掘り起こされて、命を吹き返すものもたくさん見てきました。
洋服の古着を着るように、着物の古着も同じような感覚で遊ぶように着れるように。
家にあるけど、どうすれば良いか分からないという人は気軽に相談してほしいです。
着物を着ることのハードルを下げたい。
という想いでやっているので、よろしくお願いします!
ザ・表現者!笑
発想力、行動力、新しいものをつくることへの熱量。
話を聞いていてワクワクしましたし、着物自体に感謝の気持ちを持っているところが、いかに着物が早織さんの人生を豊かにしているかということが伝わってきて、すごく応援したくなりました。
フジロックでのフェスキモノ、楽しみにしてます^^
そして着物を普段着として着てみたい!!
自分は日常生活で着物に触れる機会がほぼなかったですが、今回話を聞いてすごく興味が湧きました。
多分、来年は着物で動き回っていると思いますので、よろしくお願いします(笑)
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