Locomoロゴ
イベント登録バナー
Locomoサポーター広告

5で読めます

2024年5月16日(木)

活字に親しむことで心が育つように。新聞販売店の社長が願うこと(鵠MAI)

アイキャッチ画像

今回は毎日新聞鵠沼販売所日下部新聞店の日下部誠さん(48)に登場してもらいました。
この<Locomo>とも連携して記事を掲載しているミニコミ「鵠MAI」を、毎月発行しています。
3代に渡って新聞販売を家業とし、活字商品を毎朝届ける意義や苦労をお聞きしました。

<祖父から始まった家業>


――新聞販売を長らく家業としてきたと聞きました。


はい。祖父が終戦後すぐに横須賀で毎日新聞の販売店を開業し、父や叔父、そして私と弟が代々繋いできています。
祖父には4人の男子と2人の女子が生まれ、そのうちの父も含めた4人兄弟が全員、場所は横須賀、葉山、横浜と分かれましたが、新聞販売店を経営してきました。今も父と三男の叔父は続けています。

――日下部さんも幼い頃からその環境で育ってきたのですね。


そうです。父は葉山でお店を経営していて、そこで育ちました。
思い出すと、幼稚園のころから夕刊を近所の3、4軒に届ける「お手伝い」をしていました。
従業員さんがお店にいて、新聞のインクの匂いや配達する自転車、オートバイの音がいつも身近にある生活でした。
小学生のころも手伝いは続け、中学時代は朝早起きして朝刊を配る手伝いもしていましたね。
野球部に所属していたので、学校の勉強と部活と手伝いで一日があっという間に過ぎていく日々。
遊びに行った記憶はあまりありません。

――思春期になると将来のことも考え始めますね。


はい。祖父も父も同じ仕事をしてきたので、漠然と「将来は新聞販売の仕事をするのかもしれない」とは感じていましたが、「手伝い」からすぐに「仕事」にすることは抵抗がありました。
高校時代も野球を続けながら、変わらず店の手伝いをしていたのですが、その頃は学校に届けを出してオートバイの運転免許を取り、毎朝200軒ほどの配達を手がけていました。アルバイトですね。

――新聞配達は続けながら?

はい、そうです。大学時代は「新聞奨学生」という制度に応募して、配達や集金を続けながら、大学で勉強をしました。

<業界に入る決意>


――かなり過酷な生活だったのですね。卒業後、新聞販売店に?

いえ、別の世界を見たかったので、メーカーに就職して営業担当として2年ほど働きました。
お客さまと信頼関係を作り、製品を買って頂くことは、新聞販売とも通じるので、営業職は苦にはなりませんでしたね。
メーカーの仕事をしながら、じっくり将来を考えて「よし、新聞販売業界に入ろう」と決意しました。

――では、お父さまの店に入社したのですか?

別の販売店に修業に出ました。身内の会社だと、お互いにどうしても甘えが出ます。
それを断ち切りたかったので、秦野にある毎日新聞の販売店に3年お世話になり、配達や集金、労務管理、経営の基礎を学びました。
その後、鵠沼のお店に来て、ここでも2年ほど修業し、独立しました。


――過酷なイメージのある販売の仕事ですが、独立した当時と今では違いはありますか?


従業員の皆さんの年齢構成が時代とともに変化していますね。
以前は、新聞奨学生の学生や海外からの留学生もいたのですが、今は40歳代~70歳代の方が中心。
配達を担当して頂いている方は10名、集金担当が2名です。
「健康のために」という理由で働いておられる方もいます。販売店は配るエリアが決まっています。
私のお店は、北は市民病院のあたりから南は鵠沼海岸まで。境川と引地川の間が東西の範囲です。

<毎日届ける使命感>


――間違えずに配達する方法があるのでしょうか。


「順路帳」というこの業界ならではのメモがあります。記号を用いて、どこの家に配るのかが分かる帳面です。
お店を出発地点にして、何本目の路地をどちらに曲がるかとかバックするとかが独特の記号で記されているんです。
このメモを見ながら何回か配達すると300~400軒ほどを配り終えることができます。
毎月内容を更新して、最新の帳面を作っています。


――毎日、配達しなければならない苦労もありますよね。

大雨でも大雪でも新聞を届ける、という使命感があります。
新聞を待ってくださっているお客様がいることが、私たちの喜びでもありますし、やり甲斐でもあります。

確かに悪天候や地震に見舞われると決まった時刻にお届けできないこともありますが、たとえ遅れても確実にお届けする。
苦労もありますが、その使命感に支えられているのです。

――毎日配達していると気づきもあるのでしょうか。


毎日配達しているので、お家の異変にも気が付きやすい。
新聞受けに何日分もたまっているようであれば「おや、おかしい」となります。
他のお店の話ですが、異変に気が付いて訪問したら玄関先で倒れていた方を発見、すぐに救急車を呼んで一命を取り留めた例もあります。
いわゆる「無料の見守りサービス」も兼ねていると考えています。

――配達だけでない多角的な事業も始めていますね。

はい。新聞の信頼を基にした企画に取り組んでいます。
住宅メーカーや不動産会社と連携して、新聞を購読してくださっているお客様の中で、新築の戸建てを検討している方や土地の売買を考えておられる方をご紹介する企画です。
うちのお店を通じて、ご紹介したお客様には「特約」の特典があります。
昨年夏から折り込み広告を入れる形で始めました。
折り込み広告も信頼のおける会社やお店、団体のものしか入れていないので、お役に立てると思います。

チラシは手作業で新聞に折り込む

<活字に親しんでほしい>


――紙の新聞ならではの良さもありますか。


最近は紙の新聞をお読みになる方が減っている現実はあります。
でも、信頼のおける情報・記事を掲載した新聞は決してなくなることはないと思うんです。
その信頼のおける活字を読んで、親しんでいただきたいという願いがあります。
新聞ですから時事的な情報が多いですが、世の中の出来事を知ることで「考える力」「考える癖」がつくとも思うんです。
毎日小学生新聞という媒体も扱っています。これが結構読まれています。
小さいころから活字に親しんでほしいので、小学生新聞をお届けできることは喜びです。
うちの子どもにも小学生新聞を読ませていますが「活字に触れて心が落ち着いた子に育ってほしい」と願っています。

この記事を書いた人
アイキャッチ画像
    澤 圭一郎(毎日新聞)

    1964年生まれ。鵠沼の生まれ育ちでいまも居住。
    89年、毎日新聞入社。
    社会部記者として東京都庁や文部科学省、国会を担当。
    アテネ五輪特派員、ペルー大使公邸人質事件などの海外取材も。
    社説を担当する論説委員を経て、現在編集委員

    広告のない読みやすい記事をお届け

    見やすさ・読みやすさを重視して地域に関係のない広告を表示していません。
    Locomoのインタビュー記事や動画が「いいね!」と思ったら、
    ぜひお気持ちいただけると嬉しいです(100円〜)

    いいね!を送る

    地域の方々の「想い」や「ストーリー」を発信する活動をしています

    171の方にご応援いただいています

    あなたも地域ライターになりませんか?

    地域みんながライター!
    あなたの好きなお店、人をインタビューして記事にしてみませんか?

    応援者数の目標

    171 / 1000 人

    目指せ総応援人数1000人!