Locomoロゴ
イベント登録バナー
Locomoサポーター広告

約9分で読めます

2026年9月26日(土)

自分らしく輝ける場所をつくる ― 現役の小学校教員が湘南にひらいた、子どもの第三の居場所

アイキャッチ画像

大人はほとんど口を出さず、子どもたちだけで作るラジオ。

8月に開かれた「こどもラジオ」でマイクの前に座った子どもたちの口から出てきたのは、学校への不満でした。
つまんない。みんなでいる意味がわからない。ずっと座っていなきゃいけないのが嫌だ。

この場を用意したのは、湘南で活動する「育みサロン湘南」。
代表の木村さんは、3児のママであり、現役の小学校教員です。

そんな木村さんが、子どもたちが学校への不満を言える場所をつくっている。
その経緯を聞きに行きました。

インタビュー当日は三女の『ことちゃん』も同席

学校でも家庭でもない、「真ん中」の場所


育みサロン湘南が目指しているのは、どこかに所属させるための場所ではありません。

「学校だけじゃなくて、家庭と地域と学校の、その真ん中に立って、つなぐ役割を持ちたいなと思っていて。子どもの居場所ができたらいいなと思って、作ってます」


家庭が第一、学校が第二なら、その次にくる場所。いわゆるサードプレイスです。
ただ、木村さんがこの発想にたどり着くまでには、長い教員生活と、一度は中断した活動がありました。

「人と比べなくていい」と思わせてくれた先生


学生の頃は、進路に迷っていたといいます。

子どもに関わる仕事に就きたいという思いは漠然とありました。
そのきっかけのひとつが、体育の先生への憧れ。中学でも高校でも、印象に残る体育の先生に出会ったそうです。

「あんまり元々、自分は目立つタイプではないんですけど」と木村さん。
それでも、その先生たちのことは強く心に残りました。何が良かったのか、今の言葉で振り返ります。

「個人として認めてもらうというか。自分の良いところをすごく見つけてくれるのが上手で。そのおかげで、あんまり人と比べなくてもいいんだなって思えて」


集団の中の一人ではなく、個人として見てくれる大人がいた。その体験が、のちに木村さんがつくる場所の原型になります。

その後、社会人になり、塾の講師など子どもたちと関わる仕事を続けるなかで、ある感覚が生まれました。小学生のうちに勉強に対して前向きな気持ちを持てたら、その先の学び方が変わるのではないか。やがて働きながら免許を取り、採用試験を経て、小学校の教員になりました。

集団からこぼれる子が、置いていかれてしまう


神奈川県の教員として採用され、最初に着任したのは藤沢市の六会小学校。
初任で受け持ったのは4年生。その後、2年生、5・6年生、3年生と学年を変わりながら、8年間その学校で過ごしました。現在は八松小学校に移り、今年で8年目です。

現場に立ち続けるなかで、木村さんにはずっと消えない引っかかりがありました。

「集団の中で子どもが社会性を身につけていくので、そこはすごく大事なんですけど、絶対に置いていかれてしまう子っているんですよね。すごく苦しい思いをしたまま、進級していく」


だからこそ、思ったことがありました。

「もうちょっと、この子に関わってくれる大人がいたら。のびのび育っていけるんじゃないかな」


学校だけがその子のコミュニティだと、そこでうまくいかなかったときに、それが世界の全部になってしまう。

育みサロン湘南では学校や家庭以外のサードプレイスを提供

学校に足が向かない子の家まで、朝、迎えに行ったこともあったそうです。ただ、そのやり方の限界も木村さんは冷静に見ています。

「一緒に行こうよって言ってくれる人がいて、待っててくれると、ちょっとだけ行ってみようかなって思える子もいるんですよ。でも、みんなが出来るわけじゃない。その先ずっと続けられたかって言ったら、やっぱり何かのタイミングで出来なくなっちゃったりとか」


個人の頑張りではなく、社会の仕組みの問題だ、と。

「ヒントあり、でいい」。テストの30分間に思うこと


教室の中でも、木村さんには長く疑問に思ってきたことがあります。テストの時間です。

テストの30分間、教師は基本的に何もせず、子どもは一人で問題を解き続ける。学習につまずきのない子はそれでいい。けれど、そこまで追いついていない子はどうなるか。

「わからないのに、そこに30分。プリントに向かって30分解き続けるのは、結構ハードだと思うんですよね」


だからその時間を、個別に教える時間にしてしまえばいい、と木村さんは考えます。ほかの子は自分で解いていられるのだから。

「一緒に解いて、『ヒントありです』って書いておけばいいだけの話なので。自分の実力だったら40点しか取れないけど、残りの30点は先生と一緒にやりました、で70点。普通だと思うんですよ」


明らかに自分だけがわからないものに一人で30分向き合うより、少しでも理解が進んだ方がいいのではないか。
一人一人に向き合う木村さんだからこそ出来るサポートの形だなと感じます。

六会小学校での教員時代の様子

「頼れる人がいない」。10年前の育休で見えた風景


もうひとつの原点は、学校の外にありました。

真ん中のお子さんが生まれ、育休に入った10年ほど前のこと。それまで、木村さんにはママ友がほとんどいませんでした。子どもを保育園に預けて、ずっと働いていたからです。

初めて地域のお母さんたちと集まって話すようになり、気づいたことがありました。
自分は地元で育っているから、実家にも頼れる。友達に声をかけることもできる。でも、結婚を機にこの土地に来た人はそうではない。

「頼れる人がいない。やっぱり孤独感を持ちながら子育てする方もいるっていうのが分かって」


それは、学校現場で感じていたことと根っこでつながっていました。子どもの背景にある家庭の事情まで学校が抱えるようになり、本来その子に使いたい時間をそちらに回さなければいけなくなる。

「地域の課題解決は、すごく重要かなって感じました」


だからこそ、このとき木村さんは、お母さんたちをつなぐ場を開いていましたが、職場復帰とともに活動はいったん止まりました。

<!-- 画像候補: 10年ほど前に開催したイベントの様子がわかる写真 -->

一人では動けなかった。2026年2月の再スタート


再び動き出したのは、今年の2月です。

きっかけは、娘さんの習い事で一緒になったお母さんとの会話でした。「一緒にやってみたい」と言ってくれた人がいた。その意味を、木村さんはとても率直に語ります。

「一緒にやってみたいとか、やろうって思ってくれる人がいなかったら、多分ここまで自分は行動できてなかったかなと思います」


立ち上げをともに担ったのは、ママ友の高島さんでした。今は忙しくなって少し離れているそうですが、「また一緒にやれたり、コラボができたりするといいね」と話しているといいます。

2回目の会には、ヨガの先生のマリエさん、地域で場を開いている邦子さんが来てくれ、そこから「一緒にやろう」という話になりました。

そこからの歩みは、決して大きなものではありません。地域のお母さんが開く駄菓子屋さんの場所を借り、子どもたちが集まる横で、お母さんたちが学校のことを話す。そんな会を重ねてきました。

そして先月、初めて「こどもラジオ」を開きました。

子どもだけのラジオから聞こえてきた声


大人がほとんど関わらず、子どもだけで作るイベントは、これが初めてでした。

「子どもが主体になってやるのをメインにしたい」


ふたを開けてみると、出てきたのは学校への不満でした。

参加してくれた高校生の一人は、海外にルーツを持つ子でした。思春期にうまくいかなかったこと、いじめにあったこと、偏見の目で見られたこと。そうした話も出てきました。

「学校で本当に解決できない、解決しないまま過ぎてしまっている問題って、たくさんあるんだなと思って」


そして木村さんは、子供たちから出た「学校がつまんない」という一言を、もう少し細かく見ています。
勉強がわからないからつまらない子もいる。けれど逆に、頭の回転が速すぎて「いつまでこの勉強するの」と思ってしまう子もいる。

「45分間、子どもがずっと座って、先生の話を聞いている。大人だって、ずっと聞き続けるのはしんどいじゃないですか。それをまだ5、6年しか生きてきてない子にさせているわけなので。それは無理ですよね」


この日、木村さんにとって大きかったのは、悩みを抱えた子が自分の気持ちを言葉にしてくれたこと。

「やっぱりこういうところに壁を感じてるんだなっていうのが、リアルに聞けたっていうのは大きい」


聞いた声を、次はどう届けるか。それが今いちばんの課題だと言います。

10月から、週に一度。まちに一つの居場所を


10月からは週に1回、藤沢の「イノベーションスナックみらぼ」で活動を始める予定です。起業家たちが集まるスナックを、毎週月曜のお昼に借りるかたちです。

まずは知ってもらう期間にしたい、と木村さんは言います。いつもここで何かやっているぞ、という状態をつくる。そういう場所があること、そういう団体があることを、たくさんの人に知ってもらう。

夜の時間も借りて、邦子さんが食事を出し、大人だけでも、子どもと一緒でも集まれる形も考えているそうです。

その先に見ているものは、はっきりしています。

「最終目標としては、地域に一つそういう場所があって。子どものサードプレイスであり、地域の人たちがフラッと立ち寄れる場所」


課題もあります。メンバーはそれぞれに家庭や仕事を抱えていて、ボランティアで続けることの限界も感じている。子どもからお金は取りたくない。けれど、活動にきちんと費用を当てられる形にしないと、いつか終わりが来てしまう。そこをどうするかが、今の宿題です。

それでも木村さんの視線は、自分の団体の内側だけを向いていません。

「別に先生じゃなくてもできると思うんです。先生じゃなくても、素敵な大人が地域にいっぱいいるじゃないですか。そういう人たちが子どもの周りに集まってくれたら」


「活動を始めてから知ったんですが、子どものために動いている人が地域にたくさんいること、全然知らなかったなと思って。もっともっとそういう方々で繋がって、そして繋げていけたらな、と思います」


この先の育みサロンの活動に注目ですね。ビビッと来た方はぜひイベントに足を運んでみてください。

インタビューを終えて


話題が学校の課題に及ぶときは言葉を選び、考えながら話す一方で、子どもたちの様子を語るときの木村さんはとても楽しそうでした。
印象的だったのは、学校を守る立場からも否定する立場からも語らなかったことです。集団で育つ大切さを認めたうえで、それでもこぼれる子がいる。その両方を手放さないからこそ、「家庭と地域と学校の真ん中」という言葉が出てくるのだと感じました。

そして取材の間、三女のことちゃんが愛嬌を振りまいてくれて、笑いが起きる場面が何度もありました。
ずっとそばにいて、場の空気をやわらかくしてくれました。
取材に対応してくれて、ありがとうございました!

この記事を書いた人
アイキャッチ画像
栗原 恵介

Locomo発起人。
湘南生まれ湘南育ち(鵠沼中→湘南高)

インタビューって面白い。
人の想いやストーリーを聞ける貴重な機会。
なるべくありのまま届けられるように記事を書いています。

広告のない読みやすい記事をお届け

見やすさ・読みやすさを重視して地域に関係のない広告を表示していません。
Locomoのインタビュー記事や動画が「いいね!」と思ったら、
ぜひお気持ちいただけると嬉しいです(100円〜)

Locomoの取材は、こうした方々の応援で続いています

パートナー

サポーター

あなたも地域ライターになりませんか?

地域みんながライター!
あなたの好きなお店、人をインタビューして記事にしてみませんか?

記事を書きませんか?

湘南の店は Locomo TV でも紹介しています

記事のお店や、ほかの湘南グルメを動画でもチェックできます